林 芙美子 放浪記第二部 その14(終)
参照テキスト: 青空文庫図書カード№1813 音声再生時間: 40分00秒このブラウザでは再生できません。 再生できない場合、ダウンロードは🎵 こちら 〓 アイコンをクリックで第三部にご案内します。 [#改ページ] 私は生きる事が苦しくなると、故郷というものを考える。死ぬる時は古里で死にたいものだとよく人がこんなことも云うけれども、そんな事を聞くと、私はまた故郷と云うものをしみじみと考えてみるのだ。 毎年、春秋になると、巡査がやって来て原籍をしらべて行くけれど、私は故郷というものをそのたびに考えさせられている。「貴女のお国は、いったいどこが本当なのですか?」と、人に訊(き)かれると、私は ぐっ と詰ってしまうのだ。私には本当は、古里なんてどこでもいいのだと思う。苦しみや楽しみの中にそだっていったところが、古里なのですもの。だから、この「放浪記」も、旅の古里をなつかしがっているところが非常に多い。――思わず年を重ね、色々な事に旅愁を感じて来ると、ふとまた、本当の古里と云うものを私は考えてみるのだ。私の原籍地は、鹿児島県、東桜島、古里温泉場となっています。全く遠く流れ来つるものかなと思わ...
