ポッドキャスト 朗読パーティー 僕とサンタと幸せと、サンタさんは本当にいるの?と尋ねている子供を見かけた。 そう、今日はクリスマスイブ。僕にとって32回目のクリスマスイブ。 子供の頃の僕は、サンタを信じていただろうか?
そんなことを考えているうちに、ある年のクリスマスを思い出した。 土管からヒゲのおじさんが顔を出し、日本中の子供たちがキノコやカメを踏みつけていたその年。 小学校低学年だった僕は、必死に願っていた。 クリスマスプレゼントとお年玉と誕生日プレゼントを全部合わせていいから、ファミコンをください。 数日に及ぶ必死な交渉に、親もようやくファミコンを買うことを了承した。 当時、我が家が裕福だったのか、あるいは貧しかったのかはわからない。 でも、この年のクリスマスプレゼントは高価な買い物だったに違いない。 雪が少し降る街を父の車に乗り、知り合いのおもちゃ屋へファミコンを受け取りに行ったのを今でも覚えている。 友働きで帰りも遅かった両親。だから、おもちゃ屋へ行くのも結構遅かったように思う。 すっかり暗くなった街。おもちゃ屋さんの自宅から漏れる光に照らし出され、雪が舞っていた。 当時の僕には少し大きめの銀色の箱を受け取り、心の底から喜んだものだ。 そこにはクリスマス的なおごそかさもなければ、サンタを信じる少年の純粋さもなかった。 他人から見たら部粋な光景に見えたかもしれない。
でも、それから長い年月が流れた今、僕はこう思う。 悲願のファミコンを手に入れた僕の心から喜ぶ姿を見て、両親はきっと幸せだったに違いないと。 僕は心から両親に感謝していたし、それから何年も使うたびに箱にしまって、 箱がボロボロになるまで大事にしていた僕や姉貴の姿を見て、きっと幸せだったに違いないと。 今はそう思う。 もしクリスマスが聖なる夜に大事な人との絆を確かめ合う日なら、幸せであることに感謝をする日なら、 その年の我が家にはサンタがやってきて、家族みんなが幸せを感じられるというプレゼントを置いていってくれたのだ。 そして今夜、あれから何十年もたった今の僕がこの家に生まれたこと、 この家族と共に生きてきた三十二年を振り返り、悪くなかったなと思えたことも、 土管からひょっこり顔を出した赤色のヒゲ親父が運んでくれたクリスマスプレゼントなのかもしれない。 これまではサンタなんていないと思っていた。 次にどこかの子供に聞かれたら、僕は答えられるはずだ。 サンタはいるよって。それは幸せを感じる夜なのだから。 ここにも一つのメリークリスマス。
